【書評】 花ならば赤く 有吉佐和子
最近、立て続けに有吉作品を読んでいる。
今回、紹介する作品は「花ならば赤く」。
短大卒業後に、口紅会社へ就職した晴子は仕事に恋に奮闘しながら、大人の女性へと成長していく。。。。
50年前に描かれた作品ではあるが、古臭さを感じさせない。
天真爛漫な晴子が職場の男性たちと恋愛関係に陥っていくのだが、どろどろした感じは決してなく、さっぱりと描かれていて共感を覚える。
周囲の男性は新入女性社員である晴子を不思議な天然系の女の子として扱いつつも、徐々に惹かれていってしまう。
晴子は男性が思っているほど天然ではない。むしろ賢く冷静な女の子である。
有吉作品の主人公に共通するのだが、主人公が常に冷静。
今回の晴子の場合も、3人の男性と関係を持つのだが、情緒的な場面はあまりなく、冷静に自己を分析しながら恋愛しているのだ。ある意味かわいげのない(?)女の子ではあるが、同じ女性としては共感できる部分も多い。
小説やドラマでは情熱的な恋愛が描かれることが多い。しかし、本作品はある意味淡々と晴子の成長が描かれている。けれどもとても面白いのだ。不思議である。
結末も拍子抜けするくらい納得できる。色々あったけど、結局最後はそこへ行きつくのね・・・。手堅いね晴子さんと言いたくなるラスト。
ついつい、現実にの恋愛にも「ドラマ性」や「運命」を求めてしまう筆者ではあるのだが、有吉作品を読むと恋愛や結婚の落とし所というか、現実をまざまざと見せつけられる。
夢見がちな女性は本書や一連の有吉作品を読みながら、恋愛や女性の生き方を学ぶことをお勧めする。