【映画&読書評】野火 大岡昇平

先日、池袋の新文芸座にて映画『野火』を観賞しました。塚本晋也監督の自主制作映画。昨年の夏に封切られた際、興味を持ち、観たいと思いながら、作品のテーマの重さからか、何となく足が遠ざかっていました。今回、友人に誘われ良い機会と思い、観ることにしました。

野火 [Blu-ray]

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平成生まれで、戦争を経験したことがない私が言うのも変なのですが、かなりリアルに戦争を描けている作品だと思いました。

ジャングルの中に無数の死体が横たわり、蛆虫がわいている。飢えの極限の先に人のとる行動は、如何なるものか。情緒性を一切廃して、冷徹に描いていました。観賞する者に涙を流すことさえ許しません。

原作も読みましたが、映画同様、徹頭徹尾、戦場を冷徹に描いています。加えて、主人公の田村一等兵が極限状況の中でいかに壊れていくか、感情の動きを綿密に描いています。(強いて言えば、映画は感情描写はあまり描かれていませんでした。)

野火 (新潮文庫)

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『蛍火の墓』を読んだ時にも感じましたが、戦中派の描く戦争には情緒性よりも、皮肉混じりのリアリズムで貫かれているなと。実際に経験した人たちからすれば、お涙頂戴的な絵描き方はできないんだろうと。それが返って戦争の悲惨さを浮かび上がらせていると思いました。

月並みな感想ですが、こういった経験はもう誰もしてほしくないと心から思いました。

I watched a movie Nobi at Shin bungeiza.
The work tought what the war was.