【映画&書評】この国の空 高井有一

夏になると何となく戦争物を読みたくなります。

高井有一の『この国の空』を読了。

この国の空 (新潮文庫)

この国の空 (新潮文庫)


舞台は戦時下の東京。
主人公里子と家族を田舎に疎開させ一人暮らしの隣人、市毛の恋愛を軸に、銃後の人びとの日常を丹念に描いた作品。

戦争ものでありながら、若い兵士や戦闘シーンが直接的に出てくることはないです。戦争もので、本来主人公になりづらかった、銃後の人びとにスポットを当てたことが本作の特徴と言えましょう。

本作を手に取ったときは、戦時下の恋愛ものを想定してました。しかし、読み進めていくうちに、恋愛なんていう生易しいものではなく、もっと切実な何かを里子と市毛の関係から感じとりました。

銃後であるため、常に死と隣り合わせという状況ではないものの、いつ終わるかも分からない戦争に気をやむ毎日。先行きに希望が持てない中で、互いに惹かれ合い、むつみ合うことが日々の虚しさを解消するひとつの方策だったんではないかと。通常、恋愛とは情緒面での繋がりがクローズアップされますが、二人の関係は本能的な繋がりであるように感じます。里子は、市毛を愛してたのではなく、市毛が男だから愛してた。市毛も里子を愛してたのではなく、里子が女だから愛してた。身も蓋もないですが、戦時下で、頃合いの相手がたまたま隣人しかいなかったから、愛し合ってしまったと言えるのではないでしょうか。

平時であれば、惹かれ合うことのなかったであろう二人がむつみ合い、深い仲になってしまう所に戦時下の日常の狂気を感じずにはいられないのです。

ちょうど映画化もされていたので、シネリーブル池袋へ、見に行ってきました。

良くも悪くも伝統的な日本映画でした。130分と長めの上映時間でありながら、作品の重要なエッセンスになりうる、「叔母の疎開」「市毛の甥の死」について触れられていないのは残念でした。

二階堂ふみさんの演技は初めて見ました。良さはあまりわかりません。

そもそも、戦争を知らない世代が戦争ものを演じるのは限界があると感じます。
これは、他の戦争ものにも言えることですが。

I would like to read a novel about the
war every summer.
I read the novel ‘kono kuni no sora’and went to the movie at cine lible ikebukuro.