【書評】沈黙のひと 小池真理子

心が痛くなる一冊。

読み進めるうちに、心が苦しくなりますが、両親の老いと死という全ての人が避けて通れない事象について丹念に描ききっており、誰もが何かを感じとることができる物語に仕上がっています。

本書は、主人公の衿子とその父泰三の交流を描いています。泰三は、若い頃、不倫の末、衿子とその母を捨て、新しい家庭を築きます。泰三に新しい家庭もあった為、普通の父子の様に気軽に触れあうことの出来なかった二人。皮肉にも、二人の交流は泰三がパーキンソン病を患い、介護施設に入所した頃から活発になります。

物語は、泰三が遺した手記と手紙、衿子の回想によって断片的に徐々に泰三の新たな一面を明らかにしながら進んでいきます。

衿子は、基本的に冷静な女性です。自身の生い立ち故か、家族という運命共同体を信じることができないのですが、殊更そのことを口外することもなくクールに生きています。しかし、時折、父に対する思いが溢れ、感情的な描写がみられます。やや唐突感のある冷静さが失った様は、逆にリアリティーがありました。

☆複雑な父子関係故か、複雑な心理描写が多く読みごたえのある一冊。

This novel makes my heart bleed.
Anyone get something from this novel because this story tell us the death of the parents that we are going to have to face.



沈黙のひと (文春文庫)

沈黙のひと (文春文庫)